関東地方で唯一四尺玉が上がるとされるこうのす花火大会。その四尺玉があがる「鳳凰乱舞(おおとりらんぶ)」も大会の名物としてしっかり定着してきた感がある。そして私は目下大玉を歪み無く録音することに腐心中。こうなればこうのす花火大会に行かない理由が無い。名物の四尺玉(と三尺玉)の録音に挑戦しに行こう!
当日昼はあいにくの雨だったが天気予報は花火大会が開催される時間帯は晴れると言っている。予報を信じよう。前回と同様に今回も午後7時頃に鴻巣駅到着。花火大会自体は2時間近く開催されているが名物はラスト10分の「鳳凰乱舞」。お目当ての三尺玉と四尺玉もそこであがる。というわけで午後7時に駅に到着しても十分目的は果たせる。雨はすっかり上がっていて一部星空も見える。天候は大丈夫そうだ。風はほとんど無く湿度が高いせいか若干モヤが出ている。気温はさほど寒くは無いがこの時期は油断していると寒さにやられてトイレが近くなる。水分摂取の抑制と防寒対策はぬかりなくしてきた。
20分ほど歩いて会場に到着。いつもの無料観覧場所を目指す。が、なんか今年はやけに人が多い。去年はこの時間帯でも無料観覧場所に空きスペースなんていくらでもあったが今年は見つからない見つからない。そういえば去年まで無かった屋台の一群が無料観覧場所の一角に設置されてる。この屋台に圧迫される形で人口密度が上がったのかな?加えて先週放送の「出没!アド街ック天国」が鴻巣を特集していて花火大会に関しても軽く触れてたな。これも混雑に拍車をかけた一因か。とにかく無料観覧場所の奥の方まで散策してなんとか一人分のスペースを確保することに成功した。やれやれ。
早速機材を展開してラストの「鳳凰乱舞」を待つことにする。去年とさほど観覧位置は変わってないはずだが会場アナウンスの声やBGMがなんか聞き取りづらい。スピーカーの位置が変更されたのかもしれない。あと雨上がり特有のもやに加えて風も無いせいか煙が掃けるのに時間がかかる。「鳳凰乱舞」も予定時間を過ぎても煙掃け待ち状態でなかなか始まらない。せっかくなので煙が掃けるのを待ってる間に今回の収録の目的を説明しよう。
先月収録に臨んだ片貝まつり花火大会。周辺回路の電源を強化することで大きな音が入った直後に発生していた音の不応期はかなり改善されることが分かった。だがピーク時の大きな音そのものの波形が潰れる現象は相変わらず残ったまま。この問題を克服しなければならない。そこで問題の糸口をつかむべく過去の片貝まつり花火大会の録音を精査しているときだった。2004年録音の波形を調べているとき左チャンネルの波形はいつも通りピークが潰れていたが、右チャンネルの波形はピークが潰れずに綺麗に録音されていることに気がついた。このときはDPA4062という市販のマイク一本を使用してモノラル録音をしていた。使用しているレコーダーPMD670はモノラル録音時に空いた片方のチャンネルに20dBだけ音量を絞った音を同時に録音する機能を持っている。録り直しが効かない状況で突然想定を上回る大きな音が入ってきても音割れしていない音源を確保するためのセーフティー機能だ。そのときはこの機能をオンにしていた。通常録音のチャンネルではピークが潰れていて、20dBだけ音量を絞ったチャンネルではピーク時も潰れずに録音されている。この事実が示唆するところは大きい。大きな音のピーク潰れはマイクやその周辺回路で起きてるのでは無くレコーダー内部で起きてる可能性が濃厚になったからだ。
検証方法を検討しよう。今まで花火の音を録音するときはそのあまりに大きな音に対処するためにレコーダーPMD670に内蔵されているアッテネータを常にオンにしてきた。このアッテネータで音の大きさを1/10にしてから録音していたがそれでもまだ音が大きいためレコーダーのボリュームを2~2.5(MAXは10)ぐらいに絞って録音していた。これでぎりぎりレベルオーバーすることなく録音することができる。今までは「レベルオーバーしてないんだから問題無いだろう」くらいにしか考えてこなかったが果たしてそうだろうか?一般論だがレコーダーで録音するときのボリュームの位置は半分付近(PMD670の場合は5目盛り付近)で録音するのが良いとされている。ボリューム2~2.5目盛りは低すぎる。これはレコーダーにかなり大きい音が入ってきているのをボリュームで無理矢理押さえつけている状態だ。これではレコーダー搭載のレベルメーターがオーバーフローを表示していなくてもレコーダー内部の回路のどこかで信号がオーバーフローしていている可能性は大いにあり得る(レベルメーターが回路全域に渡ってオーバーフローを監視している保証などどこにも無い)。そこで今回はマイクの周辺回路に可変抵抗を使用したアッテネータを追加しレコーダーに入る音量を十分に抑えてみた。レコーダー内蔵の1/10アッテネータと組み合わせてボリュームが5目盛り(ほぼ中間)付近で正常に録音できるようにしてみた。
そんなこんなで待機していると煙もだいぶ掃けてきたようでいよいよラスト「鳳凰乱舞」の打ち上げが始まった。気のせいだろうか。去年より視界がワイドになったような気がする。カメラも頻繁にパンしなければ撮影できない。打ち上げ場所を増やしたのかな?四尺玉の保安距離の関係もあって観覧場所から打ち上げ場所はそれなりに距離があるはずだが腹にずしりと響く尺玉はそんなことをみじんも意識させない。そして最初の目玉である三尺玉が打ち上げられた。やや左側からゆっくりと上っていった三尺玉は轟音をとどろかせて黄金色の尾を引いていった。と、ここで予想外の事態が発生する。尺玉のときはボリューム5でも難なく録音できていたのに今上がった三尺玉のときは派手にレベルオーバーしてしまった。レベルオーバー表示が出てないときでも波形のピークが潰れることがある現象の対策をしに来たのにレベルオーバーしてしまったら対策の取りようなど無い。痛恨のミスである。「ま、まだ慌てるような時間じゃない・・・四尺玉が控えてるではないか」。レコーダーのボリュームを5より小さい値に絞って四尺玉に備える。「鳳凰乱舞」の尺玉も打ち尽くされいよいよ大トリの四尺玉の時間だ。三尺玉が打ち上げられた地点にカメラを向けてそのときを待つ。と、そのとき、突然地上からまばゆいばかりの閃光が溢れ出て足下からズシリとにぶい音が伝わってきた。四尺玉の地上開発、まさかの打ち上げ失敗である。そういえば安定して大玉を打ち上げているように見える長岡や片貝も100%の打ち上げ成功を達成できているわけでは無い。打ち上げに失敗する年もあるのだ。そう、大玉の打ち上げとは本来は技術的に非常に難易度の高い技なのである。
三尺玉でレベルオーバーし、四尺玉は打ち上げそのものに失敗。残念ながら大玉を歪み無く録音できるかの挑戦は来年以降に持ち越しとなった。ただ全く得るものが無かったわけでは無い。今まで尺玉も大玉も音のピークのレベルは大して違わないと思い込んできた。レコーダーの内部アッテネータをオンにし、ボリュームを2にして録音すると両者ともにギリギリ収まるレベルだったからだ。しかし今回外部の周辺回路に追加でアッテネータを入れ、レコーダーに入る前の段階で音量を十分に絞ってみたところ今まで同じと思い込んでいた尺玉と三尺玉・四尺玉の音のピークは全く違うことが分かった。このことから大玉録音時のピーク波形の潰れの原因はレコーダーへの過大入力にある可能性が出てきた。次回以降はさらにこのあたりを検証していこう。
あともう一点。録音した音を聞き直していて気になった点がある。前回のこうのす花火大会とほぼ同じ場所で録音したにも関わらず今回録音した音には力強さが感じられない。今回は音量を相当絞って録音したので音量不足が原因かなと思い視聴時にかなり大きめの音ので聞いてみたがやはり力強さが感じられない。周辺回路で追加したアッテネータは半固定抵抗1個による簡易的なものだった。もしかしたらそこでハイインピーダンス出力となってしまってその後に続く回路のC成分との作用の結果周波数特性に変化が生じてしまったのかもしれない。半固定抵抗のあとにバッファを一段かませて出力インピーダンスを低く抑えた方がいいかもしれない。
帰りは例年通り細い道に観客が一気に殺到するため警察の交通整理を要すほどの大渋滞になっていた。行きと同様いったん踏切を越えて鴻巣駅東口をめざす。が、この踏切が鬼門でダイヤ乱れが原因なのか開かずの踏切と化していた。旅客が来て貨物が来て旅客が来てまた旅客が来てさらに貨物が来る。10分以上かかっただろうか。この踏切でこんなに待たされたのは初めてだ。やっとホームにたどり着いたときかすかな火薬の臭いともやっぽい煙が漂ってきたことに気付いた。人の歩く速さとほとんど変わらない微風が吹いていたようだ。
写真 | - |
映像 | TOSHIBA A5529T |
レンズ フィルタ | - |
レコーダー | PMD670 |
マイク | WM-61A改 |
録音方式 | ステレオAB録音 |
録音レベル | 5.0→3.5(5.0だと三尺玉でオーバー) |
level control | manual |
ATT | -20dB |
ウインドシールド | 茶こし+ストッキング |
備考 | 入力:マイク入力 録音媒体:CF 左ch:パナ改、右ch:定電流駆動回路 |
一言コメント
旅の落書き帳です。記念に一言どうぞ。