片貝まつり花火大会(十日)

浅原神社秋季例大祭奉納大煙火

観覧日時2022年9月10日(土)
19:30~22:00
天候晴れ
主催片貝町煙火協会
煙火店片貝煙火工業
下車駅JR上越線
小千谷駅 バス30分
観覧場所新潟県小千谷市
浅原神社カメラ席
パンフレット

小千谷駅で普通列車から降りると待ってましたとばかりに長岡行きのバスがやってきた。新車の匂いがまだ残るモダンな列車とは打って変わって銀色のちょっとレトロな外観のバスに乗りこむと昭和のニューステレビのアナウンサーを彷彿とさせる女性の声の自動音声ガイダンスが車内に鳴り響きよりいっそう郷愁を誘う。小千谷総合病院の敷地内に寄り道して律儀に正面玄関まで乗客を送迎したあとはバスは田んぼに囲まれた道をひたすら駆け抜けていく。たわわに実った金色[こんじき]の稲穂を黙々と刈り取るコンバインを目にすれば季節はいよいよ秋である。

浅原神社秋季例大祭
浅原神社秋季例大祭

片貝まつり浅原神社秋季例大祭。三年ぶりの開催となる理由はあえて言うつもりも無い。大事なのは今回がこの三年間の鬱憤を晴らす祭りであるということだ。還暦花火、四十二歳厄年満願花火、本来なら去年一昨年に打ち上げるはずだったこれらのプログラムを今年まとめて打ち上げる。近年稀に見る豪華なプログラムをこの目で見届けるためにこうして片貝にやってきたのである。

花火番付
片貝まつり恒例の花火番付

本日十日は真昼の正三尺玉が打ち上がる。唯一片貝だけで見ることが出来る花火だ。直径90cmの大玉が空に昇っていく様は実に壮観で、前回見たときは意外にも黒っぽく見えた。発射薬ですすけたのか、逆光のせいか。今回は動画に収めて確認してみる。午後2時、サイレンが鳴り終わると正三尺玉が打ち上げられた。白いスモークをぱっと散らし、ちょっと遅れて辺りの空気をビリッと揺らす。真昼の小三尺玉、打ち上げ成功である。ファインダー越しに必死に追って撮影した動画を確認してみると濃淡のないのっぺりとした黒い玉が写っていた。見た感じ逆光っぽく見えるけどいかがだろうか?余談だが手ぶれ補正をONにして撮影すべきだった・・・。

  • 十日午後二時打上 真昼の正三尺玉

次は観覧場所の確保をしよう。実は今回から桟敷席での三脚使用が禁止されてしまった。後ろの人の視界の妨げになるからという理由らしい。三脚の設置が可能な場所はカメラ席(北側赤席後方)と神社の境内の二カ所のみとなる。桟敷席の喧噪も存分に味わいたいとなれば選択肢はカメラ席しか無い。というわけで早速本部でカメラ席を購入。金五千円也。ちなみにカメラ席とは別に当日切り売りの桟敷席も売っていた。こちらも五千円。この日はカメラ席は午後3時頃まで、桟敷席は夕方まで販売していた。土曜日開催で快晴と好条件が重なっていたので買えるかどうか心配していたけど杞憂に終わった。

カメラ席
カメラ席の場所取り解禁は午後4時。目の前は桟敷席

カメラ席の代金を支払っているときにふと横を見るとそこにはカップルの姿が。桟敷席にするかカメラ席にするか悩んでいるようだ。そんな迷えるカップルに受付の人が一言「カメラ席は殺伐としていますので…」。この日は午後4時ちょっと前にカメラ席の場所取りが解禁された。真昼の正三尺玉を見てから列に並んだので相当後方になってしまった。ようやくカメラ席に足を踏み入れたときはすでに最後列の優良撮影エリアはあらかた取り尽くされた後だった。仕方ないので先人たちの前に陣取り、彼らの視界を妨げないよう座って撮影させてもらうことにした。前方の桟敷席でこちらの視界が妨げられるけど致し方ない。下手に立って撮影しようものなら一触即発の事態になる。そう、カメラ席はそのくらい殺伐としているのだ。

カメラ席の列
真昼の正三尺玉を見終えてからカメラ席の列に並ぶ。この時刻だとかなり後方になってしまう
大津屋
毎度おなじみ大津屋。赤飯と白玉の予約を入れる

打ち上げ開始時刻は午後7時半。まだまだ時間があるので食料やおみやげの調達でもしておこう。近年食料は大津屋で調達している。ここで売られているお赤飯(関東で言う”おこわ”に近い)や白玉(つるつるモチモチした食感が特徴)は毎回食べるのを楽しみにしている。今回お店に寄ったときはたまたま在庫を切らしていたため予約だけしていったん店を後にした。町を練り歩いていると爆竹を鳴らし、笛太鼓を奏でながら進む屋台を見かける。花火だけではない。見所がたくさんあるのが片貝まつりである。

  • 屋台「祝還暦みつわ会」

予約しておいたお赤飯と白玉を受け取ったのでそろそろ会場に戻ろう。振り返れば最後に片貝まつりを観覧したのは2018年だったかな。数十年に渡り司会進行を務めてきたまさに片貝まつりの顔ともいうべき女性の方が還暦を機に引退したのも2018年だった。事前にそうと知っていれば2018年はレコーダーを持参して録音に臨んでいたはずだがそんなこと露知らずの私は天候不順を理由に携帯での動画撮影のみに終止してしまった。後悔している。開催を見送っていた2年間に打ち上げられているはずだった大型プログラムが一挙投入されることを知っている今回は、悔いが残らないようミラーレスカメラを持参した(片貝まつり初投入)。単発花火・大玉花火は写真で、大型プログラムは動画で収録する。さらにバックアップとしてスマホのカメラで片貝まつりの一部始終を動画撮影する。

大津屋で買ったお赤飯と白玉
お赤飯と白玉

そんなミラーレスカメラで是非撮影したいと思ってる花火の一つが大柳火[だいりゅうか]。日本古来の和火花火でしだれ柳のように地面近くまで尾を引く。どぎつい発色や発光の最先端の花火とは対極に位置する、奉納煙火の片貝まつりにマッチした心が和む花火だ。ただ暗いので通常のカメラ設定ではアンダー気味になってしまう。大柳火のときは明るく撮影できるよう設定を変える必要があるのだが、問題は大柳火が打ち上げられるタイミングを事前に把握するのが難しいこと。個人的な感覚では追悼花火のときに大柳火が選ばれやすい気がするが実際はそうでも無かったりするからね。まあ今のカメラはフィルムではなくデジタルだし、下手な鉄砲も数打ちゃ当たるの精神でバンバン撮影していこう。

桟敷席
  • 大柳火
    大柳火

大柳火以外にも片貝まつりには様々な玉が上がる。さくらんぼ千輪は片貝煙火オリジナルの作品で、在りし日の神奈川新聞花火大会でもよく見かけた(打上げ担当煙火店が片貝煙火から玉を購入したのだろう)。さらに最近の花火のトレンドでもある時差式花火の導入にも余念が無い。競技花火大会に参加し始めたことでいろいろ刺激を受け始めたのかもしれない。中間色の表現もより豊かになってきた気がする。

  • さくらんぼ千輪
    さくらんぼ千輪
  • 彩色千輪
    彩色千輪
  • 小割入大柳火
    小割入大柳火
時差式花火
  • 20時50分打上
  • 22時6分打上

今年のスターマインは豪華だ。片貝まつりでは人生の節目(厄年、還暦等)にスターマインを上げる。過去2年間開催できず、打ち上げられなかったスターマインを今年まとめて打ち上げるのだ。これで豪華にならないわけが無い。本日十日は令和二年度に打ち上げる予定だった四十二歳厄年満願特大スターマインと令和三年度に打ち上げる予定だった祝還暦超特大スターマイン(正二尺玉三発追打ち)が加わる。こんな豪華な打ち上げは後にも先にも無いだろう。ちなみに還暦大スターマインは和火花火の乱れ打ちとなる。撮影に際しては明るく写るよう設定しておいた方がいい。

  • 十日夜八時五十分打上 令和二年度 四十二歳厄年満願 先掛け 五号雷 特大スターマイン
    SS:1/50 F値:4.0 ND4 ISO:AUTO(MAX6400) W/B:白色蛍光灯 Exp:+3 PictureStyle:風景 Camera:Canon EOS KISS M Mic:内蔵マイク 解像度:4K(24P)
  • 十日夜九時二十分打上 祝 五十歳 先掛 五号雷 尺玉五十発入り 超特大スターマイン
    1/50 F値:4.0 ND4 ISO:AUTO(MAX6400) W/B:白色蛍光灯 Exp:+3 PictureStyle:風景 Camera:Canon EOS KISS M Mic:内蔵マイク 解像度:4K(24P)
  • 十日夜九時三十五分打上 令和三年 祝 還暦 先掛 尺玉雷 超特大スターマイン 打止 正二尺玉 三発追打ち
    1/50 F値:4.0 ND4 ISO:AUTO(MAX6400) W/B:白色蛍光灯 Exp:+2 PictureStyle:風景 Camera:Canon EOS KISS M Mic:内蔵マイク 解像度:4K(24P)
  • 十日夜九時四十分打上 祝 四十二歳厄年満願 先掛 五号雷 超特大スターマイン
    1/50 F値:4.0 ND4 ISO:AUTO(MAX6400) W/B:白色蛍光灯 Exp:+3 PictureStyle:風景 Camera:Canon EOS KISS M Mic:内蔵マイク 解像度:4K(24P)

大玉も健在だ。本日十日は正四尺玉が1発、正三尺玉は真昼に上がった1発も加えると計4発が打ち上がる。本日十日に打ち上げ正四尺玉は二段咲き千輪(前日九日は小割入錦冠菊)。今回は写真で撮影してみた。正三尺玉は真昼に上がった1発と夜に上がる1発を動画で、残りの2発は写真で撮影することにした。夜九時に打ち上げられる正三尺玉はなんと個人が奉納したもの。個人での三尺玉打ち上げはそう簡単に決心できるものでは無い。清水の舞台から飛び降りる覚悟が必要だったろう。聞けば亡くなった奥様と娘さんの追善供養とのこと。もの悲しくはあるがそれも花火で昇華してしまうのが片貝まつりだ。大きな決断に賛辞を送りたい。

  • 十日夜八時三十分打上 正三尺玉
    十日夜八時三十分打上 正三尺玉
  • 十日夜八時三十分打上 正三尺玉
    ※正三尺玉の打ち上げは1分36秒から
    Camera:Sharp Aquos Wish Mic:内蔵マイク 解像度:FullHD(29.97P)
  • 十日夜九時打上 正三尺玉 ※正三尺玉の打ち上げは59秒から
    1/50 F値:4.0 ND4 ISO:AUTO(MAX6400) W/B:白色蛍光灯 Exp:+3 PictureStyle:風景 Camera:Canon EOS KISS M Mic:内蔵マイク 解像度:4K(24P)
  • 十日夜九時三十分打上 正三尺玉
    十日夜九時三十分打上 正三尺玉
  • 十日夜九時三十分打上 正三尺玉
    ※正三尺玉の打ち上げは55秒から
    Camera:Sharp Aquos Wish Mic:内蔵マイク 解像度:FullHD(29.97P)
  • 十日夜十時打上 正四尺玉 昇天銀竜黄金千輪二段咲き
    十日夜十時打上 正四尺玉 昇天銀竜黄金千輪二段咲き
  • 十日夜十時打上 正四尺玉 昇天銀竜黄金千輪二段咲き
    ※正四尺玉の打ち上げは2分38秒から
    Camera:Sharp Aquos Wish Mic:内蔵マイク 解像度:FullHD(29.97P)

3年ぶりの開催となった片貝まつりも無事終了した。振り返れば終始羽織るものを必要としない暖かいなかでの観覧となった。風がもう少し吹いてくれれば申し分なかったがそれは致し方の無いこと。片貝で風が吹くときは往々にして天候が崩れるときだからだ。

帰り支度を終えてあたりを見渡すと、立ちこめた花火の煙で幻想的な景色が広がっていた。しゃぎりを奏でながら各々の町へ帰路に就く屋台が霞んでいく。もの悲しくもあり、やり遂げた達成感もある二律背反の不思議な感覚は片貝まつりを堪能した者でなければ分かるまい。

屋台
帰路に就く屋台

片貝五ノ町臨時バス停に着いたのは午後10時50分ごろ。長岡駅行き最終バスは午後10時45分発なのでとっくに出発した後なのだが例年取りこぼした乗客を拾うために臨時バスを走らせてくれることを知っているので別に慌てない。バス停に到着してみると案の定取りこぼされた乗客が結構いたようで臨時バスは2本用意されることになった。今年は臨時列車が運行されないため片貝まつり会場と長岡駅を結ぶ公共交通機関はこのバス路線だけというのも混雑と関係しているのかもしれない。結局乗ることが出来たのは2本目の臨時バス、午後11時45分ごろ出発した。この日は土曜日にもかかわらず渋滞は発生せず、日付が変わった頃に長岡駅に到着することができた。今夜はビジネスホテルに宿泊して明日はのんびり在来線で帰るつもりだ。ちなみに以前よく利用していた長岡駅から徒歩30分くらいのところにある漫画喫茶「自遊空間長岡古正寺店」は閉店してしまったらしい。直前にそのことを知り慌てて長岡駅周辺のビジネスホテルに当たるもどこも満室。出発前日に諦め半分に楽天トラベルで検索していたらたまたま予約キャンセルで放出された空き部屋を確保することが出来た。危ない危ない^-^;)

最後に、片貝に来たからにはお土産は外せない。まずは純米吟醸四尺玉。ここ片貝でしか買うことが出来ない地酒だ(と思っていたらなんとふるさと納税に対する返礼品という形で入手できるようになっていた!)。てっきりお冷やが合うのかなと思っていたら会計時にお店の人曰くほんのり冷やすぐらいが絶妙らしい。是非試してみよう。もう一つは池田屋の羊羹。いつもは会場近くの物販センターで買っていたけど今回町内をうろうろ散策していたらたまたま池田屋の店舗を見かけたのでお邪魔してみた。商品を眺めていたら「助七やうかん」なる羊羹を発見。あれ?こんな羊羹物販センターで扱っていたっけ?お店の人に尋ねてみたところ物販センターでは取り扱ってない商品だとか。調べれば池田屋の初代店主助七さんが考案した羊羹で、約40年間途絶えていた味を現在の六代目の現店主が当時の味を知る古参の顧客の協力を得て復活させたとのこと。「しっかり甘いけど、甘くない」という助七やうかん。早速購入してみた。寝かせ具合で味も変わっていくという。さてさて、いつ頃食べるとするかな。

四尺玉
助七やうかんと赤小豆羊羹
助七やうかんと赤小豆羊羹
池田屋
意外と近くにあった池田屋