第11回古河花火大会


観覧日時2016年8月6日(土)
19:20~20:50
天候晴れ
主催古河花火大会実行委員会
煙火店阿部煙火工業株式会社
野村花火工業株式会社
株式会社田熊火工 他
下車駅JR宇都宮線
古河駅 徒歩20分
観覧場所茨城県古河市
古河ゴルフリンクス(渡良瀬川河川敷)
パンフレット

今でこそ埼玉県の鴻巣で三尺玉・四尺玉が上がるようになったが、それ以前は首都圏にもっとも近い場所で巨大な三尺玉が打ち上がる花火大会と言えば茨城県・栃木県・埼玉県・群馬県が一点で接する古河で開催される花火大会だけだった(打ち上げ会場の古河はギリギリ茨城県側)。以前首都圏在住者が三尺玉以上の大玉を見ようと思ったらここ古河を逃すと新潟県の柏崎や長岡、片貝まで行くか三重県の熊野(ただし"水上"三尺玉)まで行く必要があった。いずれの花火大会も首都圏から気軽に観覧するのは厳しい。ここ古河は首都圏から日帰り圏内にありながら大玉があがる貴重な花火大会である。そんな古河花火大会も今年で開催11回目。

「あれれ?それじゃ三尺玉が上がるようになってからまだ11年目なの?」

いえいえ。実は古河花火大会の前身、渡良瀬遊水池花火大会なるものがあってその頃から三尺玉は打ち上げられていた。渡良瀬遊水池花火大会当時は2会場-三尺玉が打ち上がる渡良瀬遊水池、それに隣接するゴルフ場-同時打ち上げ方式だった。ただ前述の通り4つの県境が複雑に接している場所なので2会場といっても渡良瀬遊水池側は栃木県藤岡町の、ゴルフ場側は茨城県古河市の管轄らしく各会場で開催される花火大会は厳密には別物だったらしい。8月の下旬に二子玉川では多摩川を挟んで神奈川県川崎市側では「多摩川花火大会」が、東京都世田谷区側では「たまがわ花火大会」が同日開催されているのが有名だがこれと似たようなものか。

それが2006年以降打ち上げ会場は茨城県古河市にあるゴルフ場一カ所に集約され名称も「古河花火大会」と改められた。三尺玉もゴルフ場から打ち上げられるようになった。一カ所に集約されてから今年で11年目の花火大会ということだ。

実は渡良瀬遊水池花火大会の時代に一度だけ観覧したことがある。目玉の三尺玉は渡良瀬遊水池側から打ち上げられるということで迷わず渡良瀬遊水池側の会場に向かった。2会場だからか観客も適度に分散されていて打ち上げ直前に現地入りしたにもかかわらず遊水池の水際から観覧することができた。ぎりぎりの距離から見た三尺玉は圧巻だった。終了間際に千輪がこれでもかと打ち上げられていたのも印象に残ってる。やや離れたところで別の花火も打ち上がっていたがあれがゴルフ場で打ち上げられていたもう一つの花火だったのだろう。今回はそのゴルフ場側に向かう。

打ち上げ場所であるゴルフ場に近いJR宇都宮線の古河駅に向かうことにする。上野駅から宇都宮線に乗車したが秋葉原で買い物をしていたら遅くなり乗車予定の列車を一本逃してしまった。次の電車は・・・30分後ですかorz・・・。幹線の割には案外列車本数が少ないのね。上野発着の列車本数が少ないのは湘南新宿ラインと競合してるからかな?というわけで古河駅に到着したのは日没間際になってしまった。そうそう、宇都宮線に乗ってくる途中、栗林駅で東武線に乗り換える浴衣姿の観客が結構な数いた。東武線の新古河駅もゴルフ場に隣接しておりここからも観覧することができるのかもしれない。

打ち上げ会場のゴルフ場は今回が初めての場所だ。とりあえずメイン会場があるとおぼしき雀神社付近に向かうことにしよう。会場に到着したのは打ち上げ40分前。雀神社境内のすぐ裏が土手になっていてそこから河川敷に広がるゴルフ場を一望できる。このゴルフ場から花火があがるわけだ。ただ雀神社付近がメイン会場らしく土手は人がびっしり座っている。2会場時代のようなのんびりとした雰囲気は無い。土手を左側に進むと東武線の新古河駅にたどり着く。だから左に行っても人混みはそんなに減らないだろう。というわけで土手を右側に進むことにした。しばらく歩いていくとさすがにぼちぼち空いてるスペースが増えてきた。スピーカーがメイン会場付近にしか設置されていないためアナウンスの声は聞きにくいが仕方ない。ここから観覧することにしよう。

観覧場所
会場の端の方だが打ち上げがワイドなので目の前から花火は上がる

蒸し暑い日ではあったが風が吹くと心地よい。天候はもってくれそうだ。そうこうして打ち上げを待っていると遠くの方で雷のような音が聞こえる。雨かな?そう思って目をこらして見ると前方の遠くの方で花火が上がっているのに気がついた。しかもさらに奥の方でもう一つ別の花火が打ち上がっている。さすが8月第一週の土曜日。各所で花火が打ち上げられているようだ。

そして古河花火大会もいよいよ打ち上げ開始。メイン会場からだいぶ右にそれてしまったので不安ではあったが打ち上げが始まってみると思いの外ワイド打ち上げのため疎外感は感じない。三尺玉に至っては目の前で打ち上げられた。広い河川敷で反響の原因となる建物・障害物が無いせいか音に濁りが少なく鋭い開発音が響き渡る。だからややメイン会場から外れたこの場所から見ていても結構迫力を感じることが出来た。

※ビデオが再生されないときは各画面右上にある矢印をクリックしてください

ここは田熊火工と野村煙火と阿部煙火(三尺玉担当)がメインで打ち上げ、単発ものの割物花火に他の煙火店を招くスタイルのようだ。各煙火店が打ち上げる割物花火は5合玉と10合玉の計2発。野村花火は青色のパステルカラーの美しさが素晴らしい。また終盤にこれでもかと打ち上げる田熊火工の千輪に圧倒された。そういえば渡良瀬遊水池時代の花火も終盤に千輪づくしがあったっけ。あのときも田熊火工が打ち上げていたのかもしれない。そして待ってました三尺玉。今回は計2発の三尺玉が打ち上げられた。予想外に目の前から打ち上げられた三尺玉はこれぞ大玉という風格を漂わせながら上昇していき闇夜を隅々まで照らしながら開いていった。外れと思っていたこの場所は三尺玉を見るには結構いい場所かもしれない。

そうそう、途中秋葉原に寄ってきたと言った。実はいま録音でも常用しているWM-61Aというマイクカプセルの周辺回路に手を加えて試行錯誤をしている真っ最中だ。それに関連したパーツを買いに秋葉原に寄ってきた。去年のこうのす花火大会のときから周辺回路に手を加えてはいたが残念ながら三尺玉・四尺玉の録音時に音が歪んでしまう致命的な現象は克服できずじまいだった。マイクカプセルWM-61Aの限界と結論づけてしまうにはまだまだ検証が足りないと思っている。そこで去年のこうのす花火大会で使用した周辺回路を改良したうえで録音を試みに来たのである。久しぶりに古河花火大会に来たのも空気をふるわせるほどの大音響で開発する三尺玉が絶好の検証対象だからだ。

検証ポイントは主に三つ。一つは去年のこうのす花火大会から引き続き周辺回路の見直しを進めている点。もう一つはレコーダー(PMD670)の入力をマイク入力からライン入力に変更してみた点。最後の一つがレコーダーの記録媒体をマイクロドライブからコンパクトフラッシュに変更した点である。

去年から見直しを図っている周辺回路は平たく言えばマイクカプセルWM-61Aに内蔵されるFETを周辺回路の帰還ループの中に組み込んでしまう回路のことだ。ただケーブル長を伸ばすと安定動作しない点やそもそも三尺玉・四尺玉の音を(多少は改善されたものの)歪み無く録音することができないなど根本的な問題は解決できずじまいにいる。そこでこの周辺回路を一部改良することで歪み無く大玉の開発音を録音しようというのが一つ目のアプローチである。なお比較用に片方のチャンネルは従来の周辺回路「パナ改」(オリジナル名称はLinkwitzMod)を使用した。

次に入力の変更に関して。今まではレコーダーのマイク入力(XLRコネクタ)にマイクを接続して録音してきた。一般的にマイクが生成する電気信号は極めて微弱だ。そこで多くのレコーダーにはこの微弱な信号を増幅するマイクプリアンプなるものが内蔵されている。マイク入力から入った微弱な電気信号はこのマイクプリアンプで増幅されたうえで録音される。だがレコーダー内蔵のマイクプリアンプが花火のような大きなインパルス音を歪み無く増幅できるかに関しては今まで全く検証してこなかった。今回はこれも検証しよう。レコーダーPMD670はマイク入力の他にライン入力を持っている。マイク入力ではなくライン入力を使うことでレコーダー内蔵のマイクプリアンプを迂回して録音することができる。もっともそのままではマイクで生成される電気信号が微弱すぎて音量不足になってしまうのは前述の通り。そこで今回は周辺回路にマイクプリアンプに相当する増幅機能を付けることにした。マイクの微弱な電気信号を自作のマイクプリアンプで増幅してからライン入力で録音する。参考にしたのは秋月で販売されている2石マイクアンプキット「DIY-KIT98」と『定本トランジスタ回路の設計』(CQ出版)の第9章「負帰還増幅回路の設計[ゲインの大きな2段結合回路を実験する]」で紹介されている増幅回路の2つ。前者を「パナ改」に、後者を「WM-61A内蔵のFETを帰還ループに入れ込む回路」に組み合わせた(違う増幅回路を用意したのは各周辺回路との組み合わせに向き不向きがあるから)。

最後の記録媒体の検証に関して。レコーダーPMD670は記録媒体としてコンパクトフラッシュを利用する。ただこのコンパクトフラッシュ、固体メモリという半導体を使っていることもあってかつてはかなりいいお値段がした。そこで一部のハードディスクメーカーは固体メモリの代わりに安価に作れるハードディスクを小型化してコンパクトフラッシュのサイズに収めて製品化してしまうところも現れた。俗に「1インチハードディスク」とか「マイクロドライブ」と呼ばれているものである。規格はコンパクトフラッシュに準拠したものなので多くの場合コンパクトフラッシュの代わりにマイクロドライブを使っても問題無く動作する。かくいう私も4GBのマイクロドライブを購入し、以来ずっと花火の録音に使い続けてきた。だが月日は経ち次第に(というより急速に)固体メモリの値段は下がっていった。今やコンパクトフラッシュとマイクロドライブの値段は完全に逆転した(それを受けてマイクロドライブの新商品の開発はすでに停止されている)。となると頭をもたげてくるのは「記録媒体としてのコンパクトフラッシュとマイクロドライブは本当に音質に差が無いのだろうか」という疑問である。マイクロドライブとはすなわちハードディスクのこと。通電中は小型のモーターが常時ディスクを高速回転させている。マイクからの微弱な信号を扱うレコーダーの中にノイズをばらまくモーターが同居していていいものだろうか?そこで今回は安くなったコンパクトフラッシュ(4GB)を新たに購入して使ってみることにした。そのお値段なんと千円弱。10年ちょっとでお値段は100分の1以下に下がった。まさに驚愕である。

肝心の結果はどうだろうか?用意した2種類の周辺回路のうちWM-61A内のFETを帰還ループに組み込む方式は花火の音の後に音のレベルが変動するなどとてもじゃないが聞けたものじゃない仕上がりになってしまった。推測だが後段に設置したラインレベルに上げるための増幅回路(基本構造は『定本トランジスタ回路の設計』に掲載)を転用する際に私がミスをした可能性が高い。花火のような大きなインパルス音を増幅するのには向いていない構造だったのをうっかり見落としていた。というわけで評価できるのはもう片方の周辺回路、すなわち伝統的な「パナ改」の方だ。パナ改の録音結果を精査してみたがやはり大玉ではピーク付近での波形の潰れやその後に音の不応期っぽいものが記録されていることが確認された。ピーク付近の波形潰れ、音の不応期はマイク入力時固有の現象では無くライン入力時にも起きることが分かった。うーむ、なかなか原因が特定できない・・・。

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それにしても花火の音の大きさには改めて驚かされた。ライン入力の定格は1Vpp(peack to peak)。今回増幅率3倍のマイクプリアンプを用意してこのライン入力の定格ギリギリに収まった。ということはマイクの素の出力は1Vppの1/3、すなわち0.33Vppくらいあるということだ。マイクで音を録音してノイズとギリギリ区別できるときの出力は0.001Vppくらいからと言われていることを考えると花火の音がいかに大きいを実感することが出来る。そんな花火の大きな音をWM-61Aで録音しようとしていること自体が間違っているのだろうか・・・(そんなことないと信じたい)。

記録媒体をマイクドライブからコンパクトフラッシュへ変更した影響だが今回観覧した場所は初めての場所だったので正確な比較はできない。録音する場所場所で音もがらっと変わってくるので違いを比較するには同じ場所で録音したもの同士を比較しないと行けない。判定は次回以降に持ち越すことにしよう。

花火が終わりふとレコーダーを見てみるとバッタがちょこんと乗っていた。別の場所ではシートに蝉が飛び込んできたとちょっとした騒ぎ。今日は8月第1週の土曜日。本格的な花火シーズン到来である。

帰りは古河駅での入場規制を警戒し若干遠回りして花火会場とは反対側の東口から入場してみたがまだ入場規制はされていなかった。21:30発の国府津行き電車に乗車。乗り換え無しで行けるようになったのは本当に助かる。

使用機材一覧
写真-
映像TOSHIBA A5529T
レンズ
フィルタ
-
レコーダーPMD670
マイクWM-61A改
録音方式ステレオAB録音
録音レベル5.0
level controlmanual
ATT-
ウインドシールド茶こし+ストッキング
備考入力:ライン入力
録音媒体:CF
前半はパナ改+KT98マイクプリを右ch、WM-61A内FETも帰還ループに入れたマイクプリを左chに、後半は両者を入れ替えて録音した。

一言コメント

旅の落書き帳です。記念に一言どうぞ。

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