長岡まつり大花火大会

観覧日時2006年8月3日(木)
19:25~21:30
天候晴れ
主催長岡まつり協議会
煙火店阿部煙火工業(株)
(有)嘉瀬煙火工業
新潟煙火工業(株)
(有)小千谷煙火興業
下車駅JR上越線
長岡駅 徒歩30分
観覧場所新潟県長岡市
信濃川河川敷
パンフレット

長岡まつり大花火大会を観覧するのは今年で2度目となる。水害・震災からの復興を祈願してフェニックス花火という河川敷をフルに使ったワイドスターマインが打ち上げられるという話を聞いてこれは是非とも観覧しておかねばと思い長岡まで観覧しにいったのが去年。カメラのファインダーに入りきらないワイドスターマインはそんなに珍しくも無いが人間の視界に入りきらないワイドスターマインは生まれて初めての体験だった。フェニックスが単なる「ギネスにチャレンジ」という企画だったらこれほど人の心を打つことはなかったであろう。フェニックスに込める人々の思いがフェニックスを特別な物にしたのかもしれない。途中でカメラに収めようとすることが愚かに思えてきて撮影は早々に切り上げあとはただ呆然と眺めていたような気がする。それほど圧倒的な花火だった。ちなみにこのフェニックス、打ち上げに要す資金は全て寄付金に頼っている。だからてっきり一回限りのものだと思っていたらなんと2006年も復興祈願花火フェニックスが不死鳥のごとくよみがえると言うではないか、それも発射台を6カ所から10カ所に増やし実に総延長1.6kmに及ぶ超ワールドワイドビッグスクリーンとして・・・。

現地に到着したのは午後一時頃。今回はフェニックスをど真ん中で堪能したいとあって14番ゲートという大手大橋付近にあるゲートから入ることにした。この場所はちょうど単発打ち上げやスターマインを真正面に見る位置でもある。そのためかゲートが開放される午後二時までまだ1時間近くあるのに各ゲートの前には長蛇の列が形成されていた。自分が列に並んだ場所は折り返してきた二列目の一番最後で、自分の目の前にはちょうど一番乗りした人が順番待ちをしていた。話を聞いてみれば朝の四時から並び始めたのだとか、いやはや恐れ入ります・・・。

座ってただゲート開放を待つほか無いがこの日の長岡の天気は快晴。じっとしていても汗腺から汗が噴き出してきて皮膚が焼け付く。おととい観覧した神奈川新聞花火大会では暑いどころか寒さすら感じられたというのに。このギャップを前にして南関東と中越は明らかに気候区分が違うことを確信するに至った。この夏の間の暑さと強烈な日差しが新潟を米所たらしめているのだろう。そうそう、大事なことを言うのを忘れた。この時期長岡で花火の場所取りをする場合忘れてはならない物がある-傘だ。雨が降ってもカンカン照りの快晴でも傘は必須アイテムである。くれぐれもお忘れの無いように。

そして午後二時、時報と共に万雷が打ち上げられ無料観覧場所のゲートが開放された。先に入場した人たちはかなりでかいシートを展開しているためいい場所は思いの外早く埋まっていく。ようやくゲート入場の順番が回ってきて土手へと進んでいくがすでにかなりの部分が専有されていた。なんとか斜面にカメラとマイクを展開できるくらいのスペースは確保することができたが安定性を考えると平坦な部分の方がいい。まぁこればかりは早くに並んだもの勝ちなので文句は言えない。というわけで今回の観覧場所確保無事完了~。あとはシートを敷くだけだが強烈な日差しの下作業は遅々として進まない。ちょっと作業をしては傘の下で一休みし、また頃合いを見計らっては再度作業を繰り返していく。花火を観覧するためいろんな所で真っ昼間から場所取りしてきたがこれほどまでに過酷な環境は長岡以外に経験したことがない。長岡の夏は本当にこれが標準なんだろうか?こんなところでじっとしていては花火が始まる前にダウンしてしまいそうなので昼食も兼ねて近くのスーパーに避難することにした。

観覧場所
観覧場所より信濃川を一望。左が長生橋、右が大手大橋。

昼食と水分補給は終えた。それでも花火開始までだいぶ時間もあることだし去年は立ち入らなかった信濃川対岸の様子も散歩がてら見学してみることにしますか。その対岸に行くため大手大橋を渡っていると欄干に吊されているものを発見。もしかしたらこれがナイアガラの滝に使われるランスというものだろうか。等間隔に吊されたランスがビニールで被覆された導火線でつながれている。そのまま橋を進んでいくとちょうど先の方でナイアガラの滝を欄干に設置作業している場面に出くわした。なるほど、こうやって一つ一つ吊していくのか。しかし日よけの傘をささないといられないような環境で作業されている方々には頭が下がる。本当にお疲れ様です。

ナイアガラの滝(ランス)
ナイアガラの滝と、
ナイアガラの滝の設置
その設置風景

橋を渡ると対岸の打ち上げ会場が見えてきた。確かに今回選んだ観覧場所の真正面に位置している。今回はここからどんな花火が打ち上げられるのだろうか。

対岸の打ち上げ会場
対岸の打ち上げ会場

橋を渡り終え信濃川西岸へとたどり着く。こちらの様子は東岸とは違って明らかに場所に余裕がある。土手の内側に公園や野球場として使われている広大な平地が広がっているからだ。もちろん花火が打ち上げられる側でもあり大部分が立ち入り禁止エリアになっているが、それでも東岸に比べれば観覧場所は圧倒的に広い。ちなみに東岸では無料観覧場所と有料観覧場所には料金以外の差は無いのに対して、西岸では打ち上げ地点に近い平地の部分が有料観覧場所でそれより後方の土手ののり面が無料観覧場所と明らかに差がある。より打ち上げ地点に近い場所から観覧したいのであれば有料観覧場所を検討した方がいいかもしれない。

信濃川西岸の観覧場所
信濃川西岸の観覧場所(奥の野球場が有料観覧場所、手前の土手のり面が無料観覧場所)

時間もおしてきたことだしぼちぼち持ち場に戻って機材の設置作業にかかることにしよう。陽がだいぶ傾いてくれたおかげで傘を差さなくてもなんとか作業はできそうだ。思い返せば長岡は去年もひどい暑さだった。そんななかデジカメで撮影した写真を見てみてびっくり、写真という写真はすべてひどいノイズに埋もれており、あたかも砂嵐の中で花火が打ち上げられているかのごとくだった。コンパクトデジカメということもあるのだろうがデジカメがフィルムに比べこれほどまでに熱ノイズに弱いものかと驚愕させられたものだ。そのことを教訓に今年はペルチェ素子でデジカメを冷やすという荒技を試している。もちろんここ長岡でも使う予定だ。というか灼熱の長岡で使わなければどこで使うのだと言っても過言ではない。さてどれだけノイズが減らせるか楽しみである。

そして長岡の名物といえば同じ日に2発打ち上げられる三尺玉。これを出来る限り忠実に録音したいと思うのが音録り人の願望なのだが去年はWM-61A改で録音に臨んだところあまりの大音量を前に派手に歪んでしまい決して満足のいく結果は残せなかった。今年はJLI-60A改を長岡に始めて投入する。同時に比較用としてDPA4062という最大SPLが150dBのマイクも投入する。両者の録音結果を比べることでJLI-60A改の力も客観的に評価できるだろう。新マイクは三尺玉をどれだけ忠実に録音できるだろうか?

震災復興祈願花火フェニックスに注目が行く分本来の意味が埋没しがちだが、長岡の大花火は8月1日の長岡大空襲で戦没した人々を供養するために花火を打ち上げ始めたのがその起源だ。そのことをハッと思い出させてくれるのが大会開始に先立ち打ち上げられる10号銀菊2発である。空襲でなくなられた方々への冥福を祈るのにふさわしい白菊だったのではないだろうか。そして午後7時25分、ここに本日の長岡まつり大花火大会の開始が宣言された。

10号銀菊
戦災殉難者の冥福を祈り10号銀菊2発が打ち上げられた
10号銀菊2発 MIC:JLI-60A改 (1min 5sec)

10号玉が開発する地点はまさに頭上、観客からもどっと歓声が沸く。ここは想像以上に打ち上げ地点に近いようだ。各地の花火大会を観覧していれば10号が標準レンズに収まりきらないという経験はいくらでもあったがここ長岡はベスビアススターマインですら標準レンズでは収まりきらない。もしかして「ベスビアス」とは10号玉級の大玉も含まれていることを意味しているのだろうか?普通の花火大会であれば10号玉はそれだけで目玉プログラムになるのにスターマインにその10号玉をふんだんに取り入れてしまうところが日本有数の火薬消費量といわれている長岡の凄いところか。今日はワイドコンバージョンレンズが必須の日となりそうだ。

ただ惜しむべきは長生橋を渡ったときは感じ取られた信濃川下流から吹く確かな風が花火が打ち上げられる頃には衰えてしまった点だ。せっかくの花火も前に打ち上げられた花火の煙に巻き込まれて雲隠れという残念なケースもままあった。とはいえここ長岡の大花火は一カ所だけから打ち上げられているわけではない。河川敷をワイドに使った打ち上げが魅力なのでタイミングが合えば煙に一切巻き込まれなかった花火もたくさんあった。

また今年は大手大橋をまたいで花火が打ち上げられるケースも見られた。去年はフェニックス以外大手大橋より下流で花火が打ち上げられなかったが、今年はプログラムの合間に打ち上げられる単発花火も大手大橋下流で打ち上げられていたし(それも千輪など趣向を凝らした玉が)、通常のプログラムでもNo.23 ツインベスビアス大スターマインNo.38 尺玉100連発のように大手大橋を挟んで打ち上げられる花火が登場した。また今年復活した二尺玉も大手大橋より下流の河川敷から打ち上げられている(二尺玉に関しては後述)。これは大手大橋下流にも「フェニックス協賛席(一人千円)」という有料自由観覧席を設けたためそちらで観覧する人にも楽しんでもらえるよう打ち上げるようになったのかもしれない。ちなみにフェニックスに関しては10台ある発射台のうち4台が長生橋と大手大橋の間に、残りの6台が大手大橋より下流に設置されているためフェニックス協賛席はまさにフェニックスをど真ん中で観覧するための場所である。

  • No.1 ナイアガラ(大手大橋)
    No.1 ナイアガラ(大手大橋)
  • No.6 ベスビアス大スターマイン
    No.6 ベスビアス大スターマイン
  • No.13 超大型ワイドスターマイン
    No.13 超大型ワイドスターマイン
  • No.18 ベスビアス超大型スターマイン
    No.18 ベスビアス超大型スターマイン
No.1 ナイアガラ(大手大橋) MIC:JLI-60A改
No.13 超大型ワイドスターマイン MIC:JLI-60A改
  • No.18 ベスビアス超大型スターマイン
    No.18 ベスビアス超大型スターマイン
  • No.23 ツインベスビアス大スターマイン
    No.23 ツインベスビアス大スターマイン
  • No.26 ナイアガラ大瀑布(長生橋)
    No.26 ナイアガラ大瀑布(長生橋)
  • No.30 10号30発
    No.30 10号30発
No.30 10号30発 MIC:DPA4062
No.30 10号30発 MIC:JLI-60A改
  • No.30 10号30発
    No.30 10号30発
  • No.31 ベスビアス超大型スターマイン
    No.31 ベスビアス超大型スターマイン
  • No.35 市制100周年・新作超大型スターマイン
    No.35 市制100周年・新作超大型スターマイン
  • No.44 デザイン花火昇曲導クロセット八重芯冠菊
    No.44 デザイン花火昇曲導クロセット八重芯冠菊
No33 超大型ミラクルスターマイン「ザ・花火」 MIC:JLI-60A改 (3min 50sec)
No38 市制100周年・米百俵花火尺玉100発」 MIC:JLI-60A改 (3min 26sec)

そして長岡の大花火で忘れてはいけない正三尺玉。今年も長生橋上流より2発が打ち上げられた。1発目の三尺玉『昇曲導付 緑芯黄金すだれ』は長生橋に仕掛けられたナイアガラ大瀑布を前にして打ち上げられる。正三尺玉の大きさを比較するために先に同一地点から尺玉を打ち上げる演出はもはやおなじみのものである。1発目が打ち上げられたときはちょうど煙が打ち上げ地点付近に立ちこめていたため煙に邪魔されるかと思ったがそれでも三尺玉の盆の方が一回り大きく、煙の中から雄大な引きが現れると観客の歓声もひときわ大きくなっていった。なお三尺玉は4秒のシャッタースピードではとても一部始終を収めきれないため2発ともデジカメのビデオモードで撮影した。花火の光は結構強いのでビデオモードでも念のためNDフィルタ(ND4)を、また色温度を下げるために色温度変換フィルタ(C4)を装着して撮影に臨んだ。

一方録音の方は今回2種類のマイクを持参した。一つはDPA4062という最大SPL150dBが特徴の大音量用のマイク(モノラル)、もう一つがJLI-60Aという多少最大SPLではDPA4062に劣ると思われるものの単価が非常に安価ではあるJLI-60Aというマイク(ステレオ)。本日1発目の正三尺玉は両者のマイクを比較するために二つのマイクを左右それぞれにつないで録音を試みた。というわけで1発目の三尺玉に関してはDPA4062とJLI-60Aの二種類のマイクそれぞれの映像を用意した(両映像とも音声はモノラル)。両者を聞き比べてもらえれば二つのマイクの特性が分かると思う。ちなみに個人的な感想を言わせてもらうと、たとえ打ち上げ地点が離れていても三尺玉クラスになるとJLI-60AよりもDPA4062の方が原音に忠実な気がする。もちろんDPA4062といえど三尺玉開発時の体にぶつかるような感覚まで再現できるわけではないが音の鋭さに関しては明らかにDPA4062の方が優れている。やはりマイクの最大SPLの違いが現れた結果だろうか。

No.27 正三尺玉 『昇曲導付緑芯黄金すだれ』
  • MIC:DPA4062 monaural録音
  • MIC:JLI-60A改 monaural録音

2発目の三尺玉『昇曲導付 緑芯黄金すだれ小割浮模様』は5号・7号・10号・三尺の順で打ち上げられた。今度は煙の影響も少なくクリアな条件で三尺玉を鑑賞できて大満足。おまけに一発目には見られなかった小割までちりばめられている。ちなみにマイクはJLI-60Aのステレオ録音で臨んだ。マイクの向きは常に前方(対岸の打ち上げ場)に固定しておいたので三尺玉に関しては左の方から音が聞こえる(カメラの向きとマイクの向きはリンクしてない)。

No.43 正三尺玉 『昇曲導付緑芯黄金すだれ小割浮模様』
  • MIC:JLI-60A改 stereoAB録音

去年はWM-61Aで正三尺玉の録音に臨み派手に音飛びしてしまったのを受け今年はWM-61Aと同系統のマイクで最大SPLがより高いJLI-60Aというマイクを投入してみた。実際にはWM-60Aがそれに相当するがこのマイクは既に生産が中止されてしまったためJLI electronicsというメーカーが生産しているWM-60A互換マイクカプセルJLI-60Aを購入して使用してみた。そして数々の花火大会を通してJLI-60Aの最大SPLは確かにWM-61Aよりも高いことを確認した。花火の音をより忠実に録音したければWM-61AはJLI-60Aに置き換えるべきだろう。一方DPA4062に比べるとさすがにJLI-60Aといえども最大SPLはかなわないようだ。つまりDPA4062の最大SPLが150dBであることからJLI-60Aの最大SPLはそれ以下ということになる。特に間近で開発する尺玉や二尺玉・三尺玉といった大玉の開発音を録音してみると違いを顕著に感じ取ることが出来る(2006年調布市花火大会の尺玉100連発や2006年神奈川新聞花火大会の二尺玉、そして今回の三尺玉がその例)。ただDPA4062が一本5万円以上、JLI-60Aが1ヶ200円以内であることを考えるとJLI-60Aのコストパフォーマンスは圧倒的と言わざるを得ない。というわけでマイクにお金をかけることに抵抗がない方はDPA4062(ステレオだと5万円x2で10万円以上かかる)を、多少面倒なハンダ付けや自作をしてもいいから出来る限り安く抑えたいという人は安価なJLI-60A(あるいはまだ入手できるなら純正のWM-60A)を購入するといいのではないだろうか。

さてお待たせしました。長岡花火の大取りをつとめるフェニックス。今年は打ち上げ場所を10カ所に増やし、今まではメイン会場とは言いにくかった大手大橋下流でも6カ所から打ち上げられる(というよりフェニックスは大手大橋下流がメイン)全長1.6kmの超ワールドワイドビッグスクリーンとして帰ってきた。去年は端っこの長生橋付近より撮影を試みたがあまりのスケールのでかさに脱帽。今年は写真撮影は初めからあきらめ、ど真ん中よりフェニックスを浴びるように堪能することを主目的に変更した。ただデジカメに簡易ビデオ撮影機能もあることから思い出用にビデオ撮影もしてみることにした(ただ撮影中ファインダー一切覗いていません。カメラワークもテキトーです。ゴメンナサイ>_<)。音はJLI-60Aのステレオペアを使用。今回もカメラの向きとマイクの向きは連動していないのでご注意を(マイクは常に正面向きに固定)。それでは復興祈願花火「羽ばたけフェニックス」、打ち上げ開始でございます♪

No45 復興祈願花火「フェニックス」
  • MIC:JLI-60A改 stereoAB録音 (4min 1sec)

今年の長岡大花火も無事終わり、ふと我に返ると空気がひんやりしていることに気が付いた。なんとレンズや機材が霜で濡れているではないか。夏の花火大会でこういうことはあまり経験したことがない。昼と夜の寒暖の差が大きかったからだろうか。去年の長岡は夜になってもうちわがいるくらい暑かったのに・・・。デジカメで撮影した写真にも去年ほどのひどいノイズは乗っていなかったことからも今年の方が明らかに気温が低かったことが裏付けられる。やはり今年の夏は全国的に気温が低めなのかもしれない。

最後になるが今年の長岡は久しぶりに二尺玉が復活した。初日は上手く上がったようだが私が観覧した二日目は残念ながら上空で開花せずそのまま落下、地上で大輪の花を咲かせて散っていった-_-;)。幸いけが人はいなかったけど大玉を打ち上げるって結構難しいんだね^ー^;)。それでは最後におまけとしてそのときの映像をお送りしてお別れにしましょう。

残念!二尺玉
  • MIC:DPA4062 monaural録音 (50sec)