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調布市花火大会


日時2005年7月23日(土)
19:20〜20:30
天候曇り
場所東京都調布市
多摩川河川敷
(京王相模原線鉄橋下流)
mapion
下車駅京王線稲田堤駅 徒歩15分
主催調布市花火大会実行委員会
煙火店-

WM-61Aに不具合が出た原因は未だ特定できていない。というわけでたまにはレコーダーもカメラも持たずぶらり出かけて花火大会を満喫してみようか。今週末は調布で花火が開催されるというので何も装備せず出かけてみることにした。場所取りもしなくていい。夕方出かけて直行直帰。う〜ん、楽チン(*^-^)♪ が、その後とんでもない目に遭うとはこのとき露にも思わなかったのである。

家を出たのは午後4時。ついでにちょっと横浜でお買い物をしてから・・・、というときにグラっと横揺れに襲われる。地震だ!普段は静かな運河が揺れに合わせて波打っている。こんなことは初めてだ。とはいえ店の棚から商品が崩れ落ちるほどでもない。特に問題はなさそうなのでそのまま買い物を続け駅に向かうことにした。

買い物も済ませ駅に着くとなにやら放送案内が繰り返されている。さっきの地震についてのようだ。JRと東京メトロが全線ストップ、私鉄も徐行運転とのこと。外にいたからあまり感じなかったが結構大きい地震だったようだ。東横線は動いているが武蔵小杉で乗り換え予定のJR南武線は止まってるとのこと。さてどうしよう。とりあえず武蔵小杉まで行ってみるか。

徐行運転とのことだったがさほど時間もかからず武蔵小杉についた。これならJR南武線も復旧してるかも。淡い期待を抱いて南武線改札口まで行ってみる。だが残念ながら全線復旧のめどはいまだ立っていないようだ。改札には足止めを食らった人でごった返してる。このまま渋谷まで出て新宿経由で京王線に乗ろうかと思ったがJRも東京メトロも止まっている中渋谷から新宿に行く手段がない。と、そのとき構内放送が入る。放送によると武蔵溝ノ口〜立川間は限定的に復旧するかもしれないとのこと。それでは武蔵溝ノ口まで行ってみますか。

午後5時過ぎ、東横線→大井町線→田園都市線と乗り継いで溝ノ口に到着。駅員に尋ねてみるが残念ながら未だJR南武線は復旧のめどが立ってないらしい。完全に行き詰まってしまった。駅前のバス乗り場には人が溢れかえっているがバスが来る気配は一向にない。このままじっとしていてもいたずらに時間が過ぎていくだけだ。というわけで線路沿いの道を歩いていくことにした。途中運行が復旧すれば乗っていけばいい。

今回目指す観覧場所は多摩川挟んで会場と反対側の川崎市側。予報によると風向きは南とのことなのでそこからなら煙の心配もない。最寄り駅は南武線稲田堤駅だがここ武蔵溝ノ口からだと6つめ、かなり距離がある。それでも今回に限ってカメラ、レコーダー、三脚など重たい装備一式を持って来なかったのがせめてもの救いか。途中で南武線が復旧してくれることを祈りつつ歩き始めることにした。

沿線の道路は結構歩行者がいる。自分と同じく電車が止まっているので歩きを余儀なくされている人たちなのだろう。道中踏切の警報が鳴っていて期待させられることもあったが電車が来る様子は全くない。誤作動か何かなのだろう。ライフラインを奪われて初めて分かるありがたさ。いろいろと考えさせられる。

歩き出してかれこれ1時間半くらい経っただろうか。さすがに疲れも出てきたので休憩を兼ね近くのコンビニに寄ることにする。そのときコンビニの店名を見てびっくり。「宿河原店」とあるではないか。宿河原は武蔵溝ノ口から3つめの駅、一時間半歩いてようやく半分か・・・。

水分と栄養補給をしながらなおも歩き続ける。やがて目の前に高架橋が見えてきた。電車らしき物も動いている。良く見ると登戸駅と書いてある。だが動いていたのは小田急線の方で結局ここまで来ても南武線は止まったままだった。と、そのとき突然遠方から花火の音が聞こえてくる。時計を見れば午後7時20分、定刻通り花火の打ち上げが開始されたようだ。「とにかく多摩川河川敷に出たい」。というわけで今まで来た道から多摩川河川敷めざし方向転換する。土手に上るとようやく花火も拝むことが出来た。小玉に混じって時折尺玉が打ち上げられる。ズシリと体に響く音だ。二駅離れていても尺の音は容易に判別できる。尺玉が開発してからその音が到達するまでの時間のズレから判断すると距離は2km強。まだだいぶある。あまり焦らずこのまま土手の道を進んだ方が花火も見えていいだろう。

ちなみに調布市花火大会は今回が初めての観覧。名物尺玉100連発(今年は廃止)を初め打ち上げ総数1万発(公称)の規模を誇る同大会。てっきり物量勝負の花火大会だと思っていたらのっけからいきなり尺の三重芯が打ち上げられあっけにとられてしまった。これには2km以上離れた土手沿道の観客もドッと沸き上がる。その後も三重芯にとどまらず千輪といった芸術指向の玉も上げられていく。

なおも打ち上げ地点に迫るべく土手沿いの道を進んでゆく。面白いことに近づくにつれ花火の開発音の聞こえ方も明らかに変わるのが実感できた。遠くにいるときは腹に響く低い音とあらゆる場所に反射してきた残響音が印象的だったが距離を詰めていくと次第に高音域が強調され、残響音より直接到達する音の方が支配的になっていく。音は観覧する場所次第ということがよく分かる。

そうこうしているうちに打ち上げ地点にだいぶ近づいてきた。プログラムは型物花火に移行したようだ。メガネ、ドラネコ、子猫ちゃん・・・ん?どれも最近どこかで見かけたぞ。同じ花火師さんが作った玉だろうか。しかしこの種の型物はどこで打ち上げられても子供達には大人気だ。「あ、ドラ○もん!」「あれキテoーちゃん!かわいい!」子供の素直な歓声があたりに響く。でもおそらくプログラムには「ドラネコ」、「子猫ちゃん」とか書かれているのだろう。(ごめんね、大人の事情で・・・^^;)

こうして手ぶらで観覧してると普段注意が向かなかったことにも気づく。 「ラセン(なるとにも見える)と呼ばれる花火はちゃんと外周部から順番に変色していくんだ」、「葉落って意外とばらけずまとまって落ちるものなんだな」、「花雷ってよく見ると小型の牡丹みたい」。撮影に集中するあまりいかに花火を見てこなかったか痛感させられる。

なおも会場に接近していく。この辺りまで接近するとさすがに人がごった返してスムーズに進めなくなってきた。少し進んでは止まり、また少し進んでは止まるを繰り返す。花火が打ち上がり始めるとやはりみんな歩くスピードが落ちていく。これでは一向に前に進まない。そこでいったん土手を下りて下の車道沿いに進むことにした。

調布花火大会では打ち上げ会場が2つある。そのひとつ、大玉がメインで上がる第二会場にはだいぶ肉薄できた。川崎市側から観覧してると花火は対岸から打ち上がることになるがそれでも尺玉になると開いた盆はほとんど直上まで達する。何度観覧してもこれには圧倒されてしまう。現地で花火を見た者にしか味わえない醍醐味だろう。

尺玉をこれだけ近くで観覧するとその開発音にも圧倒される。マイクもカメラも持参していない分花火に神経を集中させることができる。「尺玉の開発音ってこんなに大きかったっけ・・・」。今まで録音してきた尺玉の開発音を思い出し、今この場で聞いている尺玉の開発音と比較してみる。花火の録音にはつきものの音の歪み。普段はこの歪みをいかに押さえるかに心血を注いでるわけだがこうして生で聞いていると人間の耳でも音の歪みが生じているのではないかという気になってきた。最大SPLが150dBを越えるDPA4062を用いれば今この場で聞いている程度の音なら歪まずに録音出来るはずだ。だがその音を聞き返したとき、果たしてこの場にいたのと同じような感覚を想起することが出来るだろうか。これに関しては今後最大SPLが異なるマイクが入手できたとき、それぞれのマイクで録音して比較してみれば新たに知見を広められそうである。

そうこうしているうちに花火も終盤にさしかかってきた。調布名物尺玉100連発は今年は無くなったがそれでも最後は一般的な花火大会を凌駕する十分な数の尺玉が上がっていく。そして最後に雷が打ち上げられフィナーレへ。これで終わりかと思いきや、打ち上げ作業が終わった花火師さんが星に火を付け観客に向かって振る。そしてそれに呼応するかのごとく川を隔てたこちら側の観客も拍手喝采を送る。きっと対岸の花火師さんにも届いただろう。

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